第一生命経済研究所 聴覚障がい者が働く職場でのコミュニケーションの問題

  • 調査期間
  • 2013/11上旬~2013/12中旬
  • 調査対象
  • 聴覚障がい者調査:企業等で健聴者と一緒に働いている聴覚障がい者 123名、健聴者調査:企業等で聴覚障がい者と一緒に働いたことがある健聴者 476名
  • 調査方法
  • 聴覚障がい者調査:配布 聴覚障がい者の集まるサークル・イベント等や個人を通じて手交、回収 手交または郵送、健聴者調査:インターネット調査

調査結果の概要

第一生命保険株式会社のシンクタンク、株式会社第一生命経済研究所では、聴覚障がい者および聴覚障がい者と一緒に働く健聴者に対し、標記のアンケート調査を実施しました。まず、仕事の時のコミュニケーションに関する問題を情報の受発信という視点から分類し、それぞれどの程度あるか聴覚障がい者に尋ねたところ、ある(「よくある」+「ときどきある」)と答えた割合が特に高いのは「情報が他の人より遅れて伝わる」(87.8%)、「自分の意見を言うタイミングがつかめない」(81.3%)という情報の受信と発信の時間的ずれに関する問題となりました。次に、コミュニケーションを行う際、聞こえない、または聞こえにくいために話の内容を十分理解できないことがどの程度あるか尋ねました。ある(「よくある」+「ときどきある」)と答えた割合は、「社内の二人以上の健聴者と打ち合わせや会議をする時」(93.4%)、「社内の二人以上の健聴者と雑談をする時」(87.4%)で特に高くなりました。また、職場において「健聴者同士が雑談している内容が気になる」ことがあるか尋ねたところ、71.5%がある(「よくある」+「ときどきある」)と答えました。仕事の時のコミュニケーションが難しいために、どのような問題があると思うかとの質問に、思う(「思う」+「ややそう思う」)と答えた割合は、「昇進や昇格が難しい」「仕事の能力を高めることが難しい」「仕事上の人間関係を深めることが難しい」で7割台となりました。さらに、仕事に対する意向について、思う(「思う」+「ややそう思う」)と答えた割合は、「もっと仕事の能力を高めたい」(87.0%)が最も高くなりました。聴覚障がい者が働く職場でのコミュニケーションを円滑にするための方法に、手話通訳者や要約筆記者の職場への派遣がありますが、打ち合わせや会議に手話通訳者・要約筆記者が「全く来ない」割合はそれぞれ84.9%・96.2%、研修に要約筆記者が「全く来ない」割合は80.8%となり、派遣がほとんどされていないことがわかりました。現在の職場に対する意識を尋ねると、「聞こえない人・聞こえにくい人に対して健聴者の理解や配慮はある」「自分にとって今の職場は働きやすい」「今の職場で働き続けたい」と思う(「思う」+「ややそう思う」)割合はそれぞれ7割前後を占めています。同様に健聴者調査において、現在(過去に聴覚障がい者と一緒に働いていた人に対してはその当時)の職場に対する意識を尋ねたところ、「聞こえない人・聞こえにくい人に対して健聴者の理解や配慮はある(あった)」と思う割合は76.7%とかなり高いですが、「聞こえない人・聞こえにくい人に対する会社の支援体制は整っている(整っていた)」と思う割合は48.1%と半数に届かず、聴覚障がい者・健聴者ともに、健聴者の理解や配慮より会社の支援に対して厳しく評価しているといえます。

調査結果

コミュニケーションの受発信に関する問題【聴覚障がい者調査】(単位:%)
聞こえない・聞こえにくいために話の内容を理解できない程度【聴覚障がい者調査】(注:回答者はそれぞれを行うことがあると答えた人(「全くない」と答えた人、または無回答の人以外))(単位:%)
コミュニケーションに関するその他の問題【聴覚障がい者調査】(単位:%)
コミュニケーションの難しさによって生じる問題【聴覚障がい者調査】(単位:%)
仕事に対する意向【聴覚障がい者調査】(単位:%)
手話通訳者・要約筆記者注1の派遣頻度【聴覚障がい者調査】(単位:%)
職場に対する評価【聴覚障がい者調査】(単位:%)
職場に対する評価【健聴者調査】(単位:%)
調査実施先:(株)第一生命経済研究所