企業の教育投資額の現状~「経済危機下の人材開発に関する実態調査」

  • 調査期間
  • 2010/02/05~2010/03/09
  • 調査対象
  • 従業員300人以上の企業 200件(配布数4,231件、回収率4.7%)
  • 調査方法
  • 郵送法

調査結果の概要

本学では2010年7月に「経済危機下の人材開発に関する実態調査」を発表しました。今回の調査結果では、正規従業員に対する全社の教育投資額の平均は「5,960万円」、1人あたりの平均投資金額は「3.7万円」でした。従業員規模別に見ると、『3,000人以上』で全社の教育投資額の平均が「22,986万円」、1人あたりの教育投資額は『1,000~3,000人未満』が「4.92万円」と最も高くなっています。規模が大きくなるほど全社の教育投資額は拡大していく傾向がありますが、1人あたりの投資額で見ると、必ずしも規模が大きいほど高いとは言えないことがわかります。当期の投資額を前期の教育投資額と比較して、「変わらない」51.6%とする企業が半数を超え、「増えた」15.6%とする企業も1割強ありました。一方、「減った」32.8%とする企業は約1/3に留まりました。経済危機下の厳しい環境でも多くの企業で正規従業員に対する教育投資を維持・増加させていたことがわかります。「減った」とする企業の教育投資の減少率は「20~30%未満」29.4%が最も多く、一方、「増えた」とする企業の教育投資の増加率は「10%未満」28.0%が最も多い結果でした。来期の教育予算額の見通しについては、「増加する」23.9%とした企業が2割強、「変わらない」59.4%とする企業が約6割と大半を占め、「減少する」16.7%とした企業は1割強に留まりました。また、前期に比べて当期の『教育予算が前期より減った企業』のうち、来期更に予算が減少するとした企業は3割強(32.7%)に留まる一方、当期の『教育予算が前期より増えた企業』のうち、約半数(48.3%)が来期も増加すると回答しています。「増加する」とする企業の来期の教育投資の増加率(見通し)は「10~20%未満」36.7%が最も多く、一方、「減少する」とする企業の教育投資の減少率(見通し)は(も)「10~20%未満」45.8%が最も多い結果でした。

調査結果

従業員規模別 正規従業員に対する全社合計の教育投資の平均額(n=157)
500人未満1,200万円
500~1,000人未満1,817万円
1,000~3,000人未満8,275万円
3,000人以上22,986万円
全体平均額5,960万円
従業員規模別 正規従業員一人あたりの教育投資の平均額(n=154)
500人未満3.53万円
500~1,000人未満2.57万円
1,000~3,000人未満4.92万円
3,000人以上3.43万円
全体平均額3.7万円
前期と比べた教育予算額の変化(n=186)
教育投資の増加率/減少率 (単位:%)
増加率
(n=25)
減少率
(n=51)
10%未満28.05.9
10~20%未満24.017.6
20~30%未満16.029.4
30~40%未満0.015.7
40~50%未満8.07.8
50~60%未満4.09.8
60~70%未満0.02.0
70~80%未満0.02.0
80~90%未満8.03.9
90~100%未満0.05.9
100%以上12.00.0
来期の教育予算額の見通し(n=180)
教育投資の増加率/減少率(見込み) (単位:%)
増加率
(n=30)
減少率
(n=24)
10%未満0.016.7
10~20%未満36.745.8
20~30%未満16.720.8
30~40%未満16.74.2
40~50%未満0.00.0
50~60%未満13.38.3
60~70%未満3.30.0
70~80%未満3.30.0
80~90%未満0.00.0
90~100%未満0.04.2
100%以上10.00.0
«企業は人なり»と言われます。しかし、現実には、ひとたび経営環境が厳しくなると、その言葉が置き去りにされてしまうことも珍しくはありません。かつての不況期には教育投資が真っ先に削減の対象となる例も多く見受けられました。では、2008年秋のリーマンブラザースの破綻に端を発した経済危機下において、日本企業の人材開発はどのような状況にあったのでしょうか。また、景気の停滞感が強まり、未だ先行き不透明な状況が続く中、日本企業の人材育成に対する姿勢は今後どうなっていくのでしょうか。本稿では、企業の教育投資に関するデータを参照しながら、日本企業の人材育成に対する姿勢を検討していきたいと思います。
調査実施先:学校法人 産業能率大学