第3回 「結婚・出産に関する調査」~子育て支援給付のあり方

  • 調査期間
  • 2007/03
  • 調査対象
  • 1都3県(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)在住の20代・30代の男女 753人(男性359人、女性394人)
  • 調査方法
  • 訪問留置/郵送法

調査結果の概要

(株)明治安田生活福祉研究所では、今年から設けられた“家族の日”(11月18日)にちなんで、子育ての経済的負担を本当に軽減できる子育て支援給付のあり方についてアンケート調査を実施した。それによると、児童手当や育児休業給付などの子育て支援給付の制度がある事を「知らなかった(「殆んど知らなかった」+「全く知らなかった」)と言う人は、未婚男性で67.1%、未婚女性で59.4%に上った(既婚者では、男性44.8%、女性41.0%)。子育て支援給付の給付内容を正しく知る事で、子育ての経済的負担感は和らぐと思いますか?と尋ねると、「和らぐと思う(「やや和らぐと思う」を含む)」との回答は、男性で75.1%、女性で80.4%に及び、正しい知識を得てもらうことにより、経済的負担感が和らぐことが期待できる=政策としての実効性の向上の可能性があると言える。子育て支援給付に関する未婚者の4項目の認知度を見ると、いずれも「知らなかった」が「知っていた」を大きく上回り、また、男性の認知度は4項目とも全て女性に比べて10%前後低いという結果であった。結婚・出産適齢層が安心して子供を産み育てるために必要と考える子育て支援給付額は0歳から2歳の子供の場合で月平均「21,000円」と、実際の支給額「10,000円」と大きな隔たりがあった(3歳から小学校卒業の子供の場合、必要額が月平均「21,000円」に対し、実際の支給額は「5,000円」と、「16,000円」の差があった)。また、出産育児一時金の必要額については、必要額は「460,000円」と考えているのに対して、実際に支給されているのは「350,000円」と、その差額は「110,000円」であった。

調査結果

児童手当や育児休業給付などの子育て支援給付の認知度 (単位:%)
子育て支援給付の給付内容を正しく知る事で、子育ての経済的負担感は和らぐと思いますか? (単位:%)
子育て支援給付(現金給付)4項目の認知度(未婚男女) (単位:%)
知っていた
(正しく+大まかに)
知らなかった
(殆んど+全く)
男性女性男性女性
※児童手当15.423.660.548.1
出産育児一時金25.138.158.138.3
出産手当金20.528.164.445.1
※育児休業給付12.422.167.953.7
※例えば、所得の低い20代前半のカップルは、“児童手当”として子供1人当たり90万円~156万円(累計額)が支給される事を知る事で、将来の生活設計の見通しが幾分か明るくなり、結婚や子供を持つ生活により積極的になるかも知れません。また、出産前に会社を辞めようと考えている女性は、“育児休業給付”として1年間にわたり月収の5割が国から支給される事を知る事で、会社を辞めないですむかもしれません。一度会社を辞めてから再就職すると生涯年収は大幅に減少します。子育て支援給付を正しく国民に知らせる努力は、少ない予算で実施できる効果的な子育て支援策かもしれません。
安心して子供を産み育てるために必要と考える子育て支援給付額
(結婚・出産適齢層全体)
【児童手当(第1子・第2子)の必要額】
<0歳~2歳>
必要額(月平均)21,000円
実際額(月平均)10,000円
必要と実際の差11,000円
<3歳~小学校卒業>
必要額(月平均)21,000円
実際額(月平均) 5,000円
必要と実際の差16,000円
【※出産育児一時金の必要額】
必要額460,000円
実際額350,000円
必要と実際の差110,000円
※出産は病気とはみなされないため、通常は保険が利きません。その代わりに、出産育児一時金が支給される事になっています。現在の給付水準(実際額)は35万円であるのに対して、結婚・出産適齢年齢層の回答者が必要と思う額は46万円でした。安心して子供を産み育てるためには、11万円不足している事になります。
児童手当支給期間の国際比較〔参考〕
日本小学校終了まで
フランス20歳未満
スウェーデン16歳未満(17歳~20歳春期まで奨学金手当)
ドイツ18歳未満(失業者は21歳未満。学生は27歳未満)
イギリス16歳未満(全日制教育は19歳未満)
子供を産みたいと思う人が産める環境づくりを
2007年6月に発表された合計特殊出生率は1.32と、前年の1.26から僅かに上昇しました。しかしながら、そのような僅かな出生率の上昇は2000年にも経験(2001年からは5年連続で下降)しており、今後の継続的な出生率の回復について確かな展望があるわけではありません。人口減少を止めて人口構造をより望ましい状態に落ち着けるためには、2006年のような僅かな上昇が10年を超えて続く必要があります。少子化対策に特効薬はないと言われます。また、出生率への政策介入については、その是非や実効性について充分に議論が尽くされたとは言えません。しかしながら、それらの議論に決着がつくのを見届けるほどの余裕は今の日本にはありません。多くの有識者が指摘している通り、思い切って発想を転換する必要があります。政策の目的は出生率の回復ではなく、「子供を産みたいと思う人が産める環境づくり」を整える事です。そのような環境づくりを目指して、国民の立場で充分に納得のできるより良い子育て支援施策のあり方を追求して、誠意ある努力と改良の工夫を積み重ねることによって、出生率はあるべき水準に届くのではないでしょうか。
調査実施先:(株)明治安田生活福祉研究所